カタルーニャ自治州独立　日本企業への影響は？ - 会計士メーカー経理サラリーマンが挑む家計管理と投資　

スペインからの独立を問う住民投票で賛成が多数を占めた東部カタルーニャ自治州で、州政府が一方的に独立に踏み切った際の混乱を避けるため、州内の企業が法人登記上の本社住所を州外に移転する動きが相次いでいる。

10/9　yahoo ニュースより引用

最近独立運動で話題のカタルーニャ自治州

日本企業にどんな影響があるのか調べて考えてみた。

カタルーニャについて

スペインの自治州で州都はバルセロナ

イベリア半島の北東部に位置し、地中海とピレネー山脈に挟まれている。

人口約750万人（スペイン全体の20％）、面積32,106㎢（スペインの全体の6.3％）

2016年のGDPは2,236億ユーロ（スペイン全体の20％）

スペインのマドリードと並ぶ経済の中心地

カタルーニャの産業

フランスと隣接しており、エル・プラット国際空港、バルセロナ港、高速鉄道AVEなど高度に交通インフラが整備されている事からアクセスが良い。

そのためバルセロナは製紙、グラフィックアート、化学、金属加工などの製造業が盛ん

スペイン第二位の自動車生産国であり、カタルーニャはその重要な部分を占める。

カタルーニャ独立による不利益

ユーロ圏への加盟ができない（スペインが反対するから）

ユーロ圏に属している特権を失う。

ＥＵへの輸出に関税がかかる事による現地企業のコストアップ

ＥＵ間の人の往来に制限がかかる。優秀な人材の確保が困難に

ＥＵからの産業奨励金を受け取れなくなる等

外国企業の中にはカタルーニャが独立すれば本社機能は全てマドリードに移す事を検討する企業もある。Ｐ＆Ｇは本社をバルセロナからマドリードに2013年に移転済み。

主な日本企業

カタルーニャ州政府投資促進局のＨＰによると代表的な企業は以下の通り。進出企業は２００社前後ある。

自動車業界

日産自動車・・・バルセロナ工場が商用車、SUV車を中心に製造

デンソー・・・エンジン制御の車載コンピュータ

カルソニック・・・自動車部品製造

ニフコ・・・自動車部品製造

日本電産・・・自動車部品製造

ユーシン・・・キーシステム）

豊和繊維工業・・・車内内張り

ニチリン・・・ブレーキホース

化学業界

花王・・・界面活性剤、トナー、香料

大塚化学・・・発泡剤

大日精化・・・顔料、

サカタインクス・・・印刷インク

住友ベークライト・・・ブレーキ用フェノール樹脂

積水化学・・・PVA樹脂

バイオ医薬

ニプロ・・・透析液

東洋紡・・・バイオ試薬のメーカーを買収

ITサービス

NTTグループ・富士通・リコーはカスタマーサービスセンターやシェアードサービスセンターを操業。　

リコーは子会社を通じて現地のカタルーニャ工科大学と3D印刷技術センターをバルセロナに開設する予定。

楽天は2012年にバルセロナのインターネット動画配信企業を買収、2013年にはEコマース事業をスタート

海運・陸運

バルセロナはヨーロッパと北アフリカ、中東、南米との間の重要な物流中継地である。

日通、日本郵船がバルセロナ港で営業

ホンダ、日産、エプソンなどのメーカーがカタルーニャに物流拠点を置いている。

進出の方法は出資、買収、自力で進出等様々だが、錚々たる日本企業がカタルーニャ州、特にバルセロナに拠点を置いている事がわかる。

ＥＵ離脱時の日本企業対応

これと似た事が昨年あった。

2016年6月23日に行われた国民投票でＥＵ離脱を決定したイギリスだ。

現在離脱交渉を継続中だ。

日立製作所はイギリスを鉄道事業の重要拠点としており、日立の社長はイギリスのＥＵ離脱は絶対反対と明言。英国に積極的に投資をしてきた日産のカルロスゴーン社長も離脱の場合はイギリスへの投資抑制の可能性を示唆している。

ただここ最近の日本企業がイギリスから撤退したというニュースはきかない。まだ離脱交渉中ということで様子見をしているのだろう。

カタルーニャ独立の日本企業への影響は？

イギリスのGDPがおよそ2.85兆ドル≒300兆円、一方カタルーニャ自治州は0.22兆ユーロ≒30兆円、単純計算10倍も経済規模が異なる。また多くの大手日本企業のヨーロッパでの主力市場はイギリス、フランス、ドイツである事を考えると、影響は限定的であると考える。まあせいぜい他の多国籍企業と同じく、子会社の本社登記をカタルーニャ以外のスペインの自治区に移すくらいで、大きな損害を被る事もないのではないかと思う今日この頃。